弁済は誰にする?

さて、当たり前のことですが、弁済は債権者、つまり受領の権限がある者にしない話になりません。それは、そうですよね。お金を借りたのと違うサラ金屋さんにお金を返しても仕方がありませんので。
しかし、例によって例外があります。次の場合は受領権限を有しない者に弁済をしても、有効になります。
いかにも受領権限がありそうなことを証明してきたので弁済したところ、実はその者には受領権限がないときで、かつ、弁済者が善意・無過失の場合です。これを債権の準占有者に対する弁済と言います。
これこそが、問題視されているスキミングです。つまり、通帳と印鑑やカードを持ってお金を下ろした場合に、銀行がそれを知らないで、なおかつ過失が無ければ、その弁済(預金の払い出し)は有効ということです。カードを持って暗証番号を打って引き出した以上、確かに銀行としては、仕方がない面がありますよね。
今後は、預金者保護法などで、規制していくのでしょうが、民法上では銀行の弁済は「有効」ということです。
また、領収書がないと、二重払いの危険もありますので、領収書が貰えない場合は、支払いを拒否出来ます。
過去問
AのBに対する貸金に関して、Bが返済をしようとしても、Aが受取証書を交付しないときは、Bは、その交付がなされるまで、返済を拒むことができる。(3-9-4)
ヒント 弁済と領収書発行は同時履行です。

弁済しないと土地が取られるだ

利害関係の無い第三者は、債務者の意思に反しないときのみに弁済をすることが出来ます。つまり、利害関係の無い第三者は、債務者の意思に反してまでは弁済をすることは出来ませんというお話をしました。
それでは、逆に、保証人になっているなどの利害関係がある第三者は、どうでしょうか。この場合は債務者の意思に反しても弁済が出来ます。
例えば、連帯保証人、物上保証人などです。物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)とは、債務者の代わりに抵当権をつけてあげた人、つまり担保を差し出した人です。
例えば、ボンクラ息子の借金で、お父さんが田舎の土地に抵当権をつけてあげた場合です。当然借金を返さないと土地を取られます。
今は、「放っておくと損をする可能性のある人」は債務者の意思に反しても、変わりに弁済出来ると覚えておいて下さい。
過去問
AはBから土地を購入したが、その土地にはBの債権者Cのために抵当権が設定され、登記もされていた。この場合、BがCに対して負う債務をAがBに代わって弁済するためには、Bの承諾を得なければならない。(58-10-4)
ヒント 放っておくと法律的に損をするかどうかです。
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弁済(べんさい)

次に弁済(べんさい)にいきます。売買契約が成立すると、売主は、買主に不動産を移転する債務(義務)を負い、買主は売主に代金を支払う債務を負います。弁済とは、その支払う義務(債務)のことをいいます。若しくは弁済のことを「給付」ということもあります。
売主  →不動産を引き渡す→ 買主
    ← お金を払う  ←
概要はわかりましたでしょうか。
さて、弁済は債務がある者、つまり債務者がするのが原則です。それは、そうですよね。しかし、次の場合は、第三者でも債務者の代わりに弁済することが出来ます。
他人のために弁済をする?物好きなと、ピンとこないかも知れませんが、日常、ドラ息子の借金を親が変わりに払ったなどということも、聞かれたことがあるでしょう。いけませんぞ。親御さんに迷惑を掛けては。ちなみに法律上は親子でも他人、つまり当事者でなければ、全て他人です。
さて、それでは、第三者が弁済する場合はどうしたらよいでしょうか?
まず、利害関係の無い第三者は、債務者の意思に反しないときのみに、弁済をすることが出来ます。逆に言うと、利害関係の無い第三者は、債務者の意思に反して弁済は出来ません。
それでは、利害関係の無い第三者とはどういった者でしょうか。それは、債務者の債務を代わりに弁済しないで放っておいても、法律的な不利益を直接こうむらない者です。
先ほどの例ですと、例え親御さんでも、それだけでは、利害関係の無い第三者です。世間体が悪いなどでは、認められないのです。
過去問
AのBからの借入金100万円の弁済について、Aの兄Cは、Aが反対しても、Bの承諾があれば、Bに弁済することができる。(5-6-1)
ヒント 利害関係があるのでしょうか?
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債権譲渡をしたら

債権譲渡をした後は。
債権譲渡をすること自体は自由ですとお話しました。しかし、ここで一つ問題点があります。
それは、債務者が、何も知らないのに、急に他の人にお金を払えと言われても困ってしまいますよね。「振り込め詐欺」かもしれないし、誰に払うの?というお話になります。
そこで、債権を譲渡した場合は譲渡人から、債務者に対する債権譲渡の通知が必要です。債権を譲りましたからと、相手者から教えてもらえば、債務者も混乱しませんよね。
ところで、この通知は譲渡人つまり、元の債権者から債務者に宛ててする必要があります。それはそうですよね。だって、譲受人から通知が来ても本当かどうかわかりませんから。これは、内容証明書など、日付が残る正式な手紙でも結論は同じです。あくまでも譲渡人=債権者からの通知が必要です。
また昨日書いたように、債務者Cの承諾はいりません。Aに払うのも、Cに払うのも金額は一緒だからです。
ということは、あまり払わないでおいておくと、債権譲渡されて、コワイお兄さんが取立てに来る可能性もあるわけだ。サラ金の大手会社なんか体面があるので、そういった方法を使うとか使わないとか・・・。
譲渡人A → 債務者B
↓ AからBへの通知が必要です。Cからでは、本当かどうかわかりません
譲受人C
過去問
AがBに対する債権をCに譲渡した場合の、CのBに対する対抗要件として、必要かつ十分なものは次の記述のうちどれか。(55-1全)
1. CからBに通知する。
2. CからA及びBに通知する。
3. AからBに通知し、かつ、Bが承諾することを要する。
4. AからBに通知する。
ヒント 債務者が誰に払うのかが、わかれば問題はないはずです。債務者保護を考える。
4番

債権譲渡

債権譲渡とは、誰かからお金をもらえる権利をもっているときに、その権利を別の人に譲ってしまうことです。
何故宅建試験にこのお話が出てくるのかと申しますと、次のような場面を想定しています。
家の持ち主Aが、Bに家を売りました。でも、AはCから2.000万円借金をしてました。そのため、売買代金の取り立て権(債権)をCに譲渡致しました。
A → 家を売ったお金2.000万円 →B
↓ AはCに借金があるため、2.000万円の取り立て権をCに債権譲渡
C
そうしますと、CはBから取り立てすることが出来ます。BはCに払えば、OKということです。でも。Bが家を買ったのはAからで、Cに払うのは何か釈然としませんよね。
それでは、どのような手続きを取ればいいのでしょうか。債権譲渡はその部分が理解出来ればOKです。
まず、原則として債権譲渡することは自由です。当事者全てが納得すれば、損をする人はいないからです。
しかし、先ほどの例で譲渡人Aが債務者Bに対して有していた債権を、譲受人Cが行使するには、つまりBか取り立てるには譲渡人Aと譲受人Cの合意が必要です。
A → B
↓ ←この合意が必要です。
C
これは、当たり前ですよね。Cが持っているAへの借金をBから、返してもらうわけですから、AとCの合意がないと話になりません。
問題なのは、この時にBの承諾が必要かどうかです。結論から話ますと、Bの承諾は必要ありません。Bは、Aに返すのも、Cに返すのも払う金額は一緒だからです。
しかし、Bが他の者に取り立てられるのが納得がいかないのならば、事前にAと「譲渡禁止の特約」を結ぶことは出来ます。
ただし、この特約を「善意の第三者」つまり、特約のあることを知らない第三者には対抗出来ません。結局のところ、Cが善意の場合は債権譲渡は有効です。
過去問
Aは、Bに対して有する売買代金債権を、Cに譲渡した。当該債権につき譲渡禁止の特約が付されているときは、当該特約の存在につきCが善意であっても、CはBに対し債務の履行を請求できない。(61-10-3)
ヒント Bが、払う金額は一緒ですから。保護する必要がないのです。
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